「出生前検査」を受けるか受けないか
高齢出産となると染色体異常の頻度が増すため「出生前診断」を受けるか受けないかを医師から聞かれた。
検査費用は週数や検査の種類により自費となり数万円から数十万円。
医師からは、事前に知ることで染色体異常の子を堕すカップルもいれば、事実を知って受け入れる準備をするカップルもいると聞いたが、
ネットニュースなどで調べたところ、「染色体異常」と検査結果が出た9割のカップルが中絶するらしい。
検査自体のことを問いかけられて、最初の反応は「本当に受ける必要があるのかな?」という疑問だった。
もし、障がい者と分かったら、赤ちゃんを産むことに怯む気持ちもある。
でも、不妊治療で命の誕生に人間の手を加えたり、健常者でないと受け付けないと命を絶たせたりすることは、本当に良いのか?
子どもの命を親の好きなようにコントロールする感じが私には受け入れられない。
パートナーは、「もし障がい者の子を持ったらその負担は大きい。障がい者の子も親がいなくなったらどうするのかという事まで自分たちが面倒見切れるか」ということを懸念していた。
そこで、実際に、障がいがある子が生まれてきたら育てられる力は自分にはあるのだろうか?と向き合って考えてみた。
一番は『金銭的な負担ができるかどうか』の不安だろう。
ということで、まずは障がい者が生まれてきた場合の介護費用や医療費などの補助や助成について2023年時点の世田谷区の制度を調べてみた。
不安に思うことは、解決思考で一つずつ精査していくことで、漠然とした悩みは減っていく。
万が一使うことになる場合に、まずはネットで調べられる範囲でまとめたので、(実際に必要になれば役所に問い合わせたり相談員に連絡したりと詳しく調べますが)ご興味ある方はどうぞご参考ください。(注意:各自治体によって制度やサービスが異なることがあります。)
障がい者の子への手当について
特別児童扶養手当(国の制度)
心身に重度または中度程度の障害(身体障害者手帳3級(一部除く)・一部4級程度以上、愛の手帳3度程度以上、そのほかの内部障害、精神 障害、疾病など)のある20歳未満の児童を養育している場合(ただし児童が施設等に入所している場合は除く)
複数の障害がある場合は、個々の障害の程度が上記より軽度な場合でも該当となることがある。
支給月額(令和4年4月1日現在)
重度障害 52,400円
中度障害 34,900円
その他、
障害児福祉手当(国の制度)
精神又は身体に重度の障害を有する児童に対して支給される手当です。受給資格が認定されると、申請月の翌月分から、毎年2月・5月・8月・11月に各月の前月分までの手当が支給されます。手当月額は14,850円です。所得制限あり
受給資格:精神又は身体に重度の障害を有するため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の方
[手当の受給(申請)ができない方]
(1)年齢が20歳以上の方
(2)施設等に入所されている方
(3)当該障害を支給理由とする年金を受給されている方
重度心身障害者手当(都の制度)
心身に重度の障害を有するため、常時複雑な介護を必要とする方に対して、東京都の条例により支給される手当です。受給資格が認定されると、月額6万円が毎月支給されます。所得制限あり。1号〜3号
心身障害者福祉手当(区の制度)
身体障害者手帳1・2級 愛の手帳1~3度 脳性麻痺(まひ)、進行性筋萎縮(いしゅく)症:月額16,500円(次に該当する方は月額1,500円 ①児童育成手当(障害手当)受給中の方 ②20歳未満の方 )
身体障害者手帳3級 愛の手帳4度:月額7,500円 (次に該当する方は月額1,500円 ①児童育成手当(障害手当)受給中の方 ②20歳未満の方 )
所得・支給制限あり。
障がい者の子への手帳について
療育手帳:
知的障害があると判定された方に交付される手帳です。療育手帳をお持ちの方は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスや、各自治体や民間事業者が提供するサービスを受けることが出来ます。
身体者障害者手帳:
視覚、聴覚、肢体不自由、心臓や消化器の障害、疾患などがある方に交付される手帳です。さまざまなサービスや制度を利用することができます。
障がい者の子への医療制度について
小児慢性特定疾病医療費助成制度
ダウン症の場合は、医学的な条件を満たす場合のみ助成の対象。助成額は所得により異なる。
その他、健常者でも受けられる「子ども医療費女性制度」:世田谷区では令和5年4月1日より現行の中学校3年生までの自己負担、所得上限のない医療費助成制度を、高校生相当世代まで拡大。
障がい児保育について
未就学児を対象としたサービスに、「児童発達支援」、学齢児を対象としたものに「放課後等デイサービス」がある。
どちらも、公的な機関だけでなく、一般企業やNPO法人などサービスの提供者はさまざま。
その他、保育所等訪問支援、発達障害相談・療育センターなどがある。
「出生前検査」を受けないと決めた。
私の感想は、障がい者が生まれてきた場合でも、「なんとか、育てていけるのではないか?」だった。
社会的保障がある上に、どうしても立ち行かなくなった時にも、日本には最低限の生活保護というセーフティーネットもある。
障がい者の母親は、つきっきりの介護育児で家からなかなか出られないという問題があり、産んだ子の面倒は自分でみるから母親の仕事やその他の生きがいはなくて当然というような、障がい者の子を持つ責任を親のみが負わされる前提で成立する制度と、風潮があるらしい。
万が一、私がそのような立場になるなら、それと向き合うことが運命なんだろう。
受け止めて、一生をかけてでも風潮や現状を変えることに力を注ぎなさいという天命だと受け入れよう。
「子どもをちゃんと愛して育てられるために、サポートも積極的に受けて、制度の不具合や必要だと感じたことに対して戦いながら、奮闘しよう。」
要するに、どんな子でも受け入れる「覚悟」があるか?
そこで起こってくる問題と向き合う覚悟が持てるか?
覚悟を決めたら、「検査は受けない」としっかりと思えた。
実際、検査結果が間違うこともあるらしいし、生まれてから数年後にわかる自閉スペクトラムやADHDなどの発達障害が分かるかもしれない。
「何かあったらどうしよう?」とただただ怯えたり、自分の意に沿わない子は排除することを何の疑問もなく行えるような親であったら、
もし健常者の子供が産まれたとしても、自分の思い通りにしようと子供に強いたり、思い通りにならないとその子をシャットアウトしたりするかもしれない。
生まれてきた「この子」を丸ごと受け入れるという決意こそが、どんな問題が起きてもそれを受け止められる勇気に繋がると思う。
「障がいを持って産まれてきた子自身が辛いかもしれないじゃないか」という意見に対して思うこと
本人以外の誰がその子が幸せか、不幸せかをどうかを決められる権利があるのか?
自分の偏見、先入観で他人の価値を決めることもできなければ、他人の気持ちも知る由がない。
「産まれたい」という意思が、お腹の子自身にあるなら、お腹の中で成長してくれて産まれてくるだろうし、もし死産や早産になったとしたら天明。
ありのままを受け入れる覚悟をしたら、あとは「自然のままに任せよう。」というのが結論。
「親が死んだ後、残された障がい者の子どもの人生は?」という意見に対して思うこと
これに対しても、生きている間に環境やサポートの準備をすることに力を注いだり、そもそも親が亡くなったら障がい者が孤立するような制度の不具合に対して、その問題を直面する親として改革のために奮闘するぞ、というのが決意。
カップルで向き合って考えて出した答えがその人たちにとっての正解
人にはいろいろな受け止め方があり、もし、障がい者を育てるのが苦痛と思ってしまって、その気持ちが変わらないのであるなら、”産まない”という選択肢をした方が親と子どもの幸せになるのかもしれない。
健常者だったとしても、障がい者であったとしても、愛されない親のもとで育てられる子どもは不幸。
極度の貧困で栄養失調になったり、戦争で命の危険に晒されない限り、子育てに多少の不足や不具合があったとしても、子どもを愛して大切に思う親が育てたら、子どもは安心して生きられてしっかりと育ってくれるだろう。
初めは、「出生前診断」を受けることを賛成して、障がい者を産み育てることもしなったら?ということに対して否定的だったパートナーも、何度か話し合う中で、「受けない」という選択肢を理解してくれた。
ちなみに、フランスなどの他国では、初めから妊婦健診の項目の中に組み込まれているらしいが、日本では「出生前診断」は自由意志。
検査が組み込まれていること自体にはどちらが良いのかどうかは判断つかないが、保険適用外の高額な値段ではなく検査が受けられること自体は良いと思う。
産む産まないの決断も、自分やパートナーとの生き方だから、どっちが良い悪いもないと思う。
自分たちがどちらを選択したいかということを考えて、自分たちで結論を出す行為そのものが大切。
その出した答えに対して良い悪いはなく、その家族にとっての正解になるだろう。